
北鎌倉の駅を降りて、線路沿いの静かな道を歩いていくと辿り着く「明月院(めいげついん)」。別名「あじさい寺」として知られ、6月になると参道が青一色の紫陽花に染まります。今回は紫陽花のシーズンを少し外した時期に訪れましたが、丸窓から望む庭園や苔むした境内の風景など、季節を問わず見どころの多いお寺だと感じました。拝観料やアクセス、悟りの窓の撮り方まで、実際に歩いて見てきた順にご紹介します。

明月院ってどんなお寺?|「あじさい寺」と呼ばれる理由
山内首藤氏から北条氏へ、明月院の成り立ち

北鎌倉の静かな住宅地に佇む明月院は、臨済宗建長寺派の禅寺。その歴史は鎌倉時代までさかのぼります。はじまりは1160年(永暦元年)、平治の乱で戦死した首藤俊通の菩提を弔うため、子の山内経俊が建てた「明月庵」でした。
その後1256年、鎌倉幕府第5代執権・北条時頼がこの地に「最明寺」を建立。子の時宗の代に禅僧・蘭渓道隆を開山として「禅興寺」へと拡大されます。さらに1380年、関東管領・上杉憲方が禅興寺を中興した際、塔頭であった明月庵が「明月院」と改められました。明治初期の廃仏毀釈で本体の禅興寺は廃されましたが、明月院だけは残り、今も多くの人が訪れる場所になっています。
「明月院ブルー」の秘密|約2,500株のヒメアジサイ

明月院を語るうえで欠かせないのが、「明月院ブルー」と呼ばれる青一色の紫陽花です。境内には約2,500株ものヒメアジサイが植えられていて、その多くが青系の色で統一されているのが特徴。もともとは戦後、手入れが比較的楽だからという理由で植えられたそうですが、それが今ではすっかり明月院の代名詞になっているのが面白いところです。境内を歩いていると、青一色の景色に思わず足を止めたくなる瞬間が何度もありました。
紫陽花の見頃と、私が訪れるならこの時間帯
明月院の紫陽花が見頃を迎えるのは、例年6月上旬から中旬にかけて。年によって前後しますが、ピークは6月中旬あたりです。ただし、この時期は週末になると数時間待ちになることも珍しくありません。
私がおすすめしたいのは、平日の朝8時半の開門と同時に入ること。人が少ない時間帯なら、青い紫陽花と静けさをじっくり味わえます。雨の日もねらい目で、しっとり濡れた石畳と紫陽花の組み合わせは、晴れの日とはまた違う趣がありました。
明月院への行き方と拝観料
北鎌倉駅から歩く|徒歩8〜10分の静かな道
明月院の最寄り駅は、JR横須賀線の北鎌倉駅。鎌倉駅のひとつ手前の駅で、都内からは横浜経由で1時間ほどです。改札を出たら線路沿いを鎌倉方面へ進み、案内板に従って住宅街の中を歩くと、徒歩8〜10分ほどで到着します。道中は古民家風のカフェや竹林が続き、観光客の多い鎌倉駅周辺とはまた違う、落ち着いた空気を感じられるルートです。
車で訪れるなら|駐車場と道の混み具合
明月院には専用駐車場がありません。車で訪れる場合は、周辺のコインパーキングを利用することになります。北鎌倉駅周辺にもいくつか駐車場がありますが、紫陽花シーズンや休日は早い時間に満車になりやすいので、余裕をもって向かうのがおすすめです。
北鎌倉駅から鶴岡八幡宮や鎌倉駅方面へ向かう道は道幅が狭く、歩行者も多いため運転には注意が必要です。休日は渋滞も発生しやすいので、可能であれば公共交通機関を使うか、鶴岡八幡宮周辺の大きな駐車場に停めて歩いて巡るルートのほうがスムーズだと感じました。
拝観時間と拝観料

明月院は季節によって拝観時間が変わります。通常期(7月〜5月)は9:00〜16:00、紫陽花シーズンの6月は8:30〜17:00(受付終了16:30)と、朝の開門が早まり夕方の受付も延びる仕組みです。拝観料は季節にかかわらず、高校生以上500円・小中学生300円で統一されています(障害者手帳の提示で本人無料、付添1名も無料)。後庭園は紅葉期など特別公開のタイミングのみ、別途500円で見学できます。整理券やネット予約の仕組みはなく、当日そのまま並んで入る形です。
| 住所 | 神奈川県鎌倉市山ノ内189 |
| TEL | 0467-24-3437 |
| 拝観時間 | 9:00〜16:00(6月は8:30〜17:00、受付16:30まで) |
| 拝観料 | 高校生以上500円/小中学生300円(後庭園特別公開時は+500円) |
| アクセス | JR横須賀線 北鎌倉駅から徒歩8〜10分 |
| 駐車場 | 専用駐車場なし(周辺コインパーキングを利用) |
混雑を避けるコツ
明月院は6月になると大変混み合います。特に週末の10時〜14時ごろは、参道や丸窓の撮影待ちで列ができることも。おすすめは平日の開門直後(8時半前後)に訪れること。それが難しい場合は、雨の日や、北鎌倉からではなく鎌倉駅側から逆ルートで散策するのも、混雑を分散させる一つの方法です。帰りは北鎌倉駅に戻らず、鎌倉駅まで歩きながら建長寺や鶴岡八幡宮を巡るのも、鎌倉らしい散策コースになると思います。

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悟りの窓(円窓)とは

明月院の本堂奥にある円形の窓は「悟りの窓」とも呼ばれ、正式には「円窓(えんそう)」といいます。禅の思想を表す象徴的な意匠のひとつで、大きな丸窓には禅の心・真理、さらには宇宙をあらわす意味が込められているそうです。この窓を通して見える庭園は、まるで一枚の掛け軸のよう。新緑には鮮やかな緑、梅雨には紫陽花、秋は紅葉と、季節ごとに違う景色が切り取られます。何度訪れても違う一枚に出会えるのが、この場所の面白いところだと思います。
悟りの窓を撮るときに気をつけたこと

悟りの窓を撮るなら、朝一番の時間帯が狙い目です。光がやわらかく、参拝客も少ないので、静かな空気感をそのまま写真に収められます。

撮影のベストポジションは、本堂正面の中央よりやや手前あたり。スマートフォンなら軽くズームして、窓枠いっぱいに庭園が収まるよう調整すると、絵画のような一枚になります。

あえて少し外して撮ると、丸窓を「覗いている」ような感覚が出るのも面白い構図でした。

御朱印と境内の茶屋
明月院のご朱印

明月院のご朱印と本堂。
明月院を訪れたらぜひいただきたいのが御朱印です。本堂で授与されるご朱印は、中央に「聖観世音菩薩」と墨書され、本尊が祀られていることを示しています。私がいただいたのは令和七年五月一日の日付入り。手書きならではの力強さと、寺院の静けさが伝わってくる一枚になりました。

明月院のご朱印と枯山水庭園。
御朱印は拝観後、本堂の受付で300円で授与されます。繁忙期は多少並ぶこともあるので、時間に余裕をもって訪れるのがおすすめ。紫陽花が描かれたオリジナルの御朱印帳もあり、御朱印集めがはじめての方にも選びやすいデザインでした。
境内の茶屋「月笑軒」でひと休み
境内には「月笑軒」という茶屋があり、抹茶と和菓子のセット(700円)などをいただけます。添えられる和菓子は島根・桂月堂の「出雲三昧」で、求肥と大納言の羊羹、落雁を重ねた三層のお菓子だそうです。晴れた日には庭に野点傘と緋毛氈の茶席が用意されることもあり、境内を歩き回ったあとにひと息つくにはちょうどいい場所。予約は不要で、当日ふらっと立ち寄れます(団体の場合は事前に電話で確認しておくと安心です)。
写真で巡る境内さんぽ
総門と参道

明月院の正面入口。
参道入口には、歴史を感じさせる石柱と豊かな緑が広がっています。

明月院の総門。ここで拝観券を購入します。
落ち着いた和の佇まいの総門をくぐると、境内へと続く静かな時間がはじまります。

山門へと続く参道は、新緑の季節には頭上に緑のアーチが広がる爽やかな空間です。

参道の奥に見える山門は、木漏れ日と花々に包まれた景色でした。

6月には両脇に紫陽花が咲き並び、「あじさい寺」の名にふさわしい景色になります。

山門から本堂へ

木々の緑に溶け込むように佇む山門。ここをくぐると、喧騒から離れた別世界に足を踏み入れるような感覚があります。

山門中央に掲げられた「福源山(ふくげんざん)」の扁額は、明月院の山号を表しています。シンプルながら力強い書体が、古刹としての歴史を静かに物語っていました。

山門をくぐるとすぐ現れる本堂。白壁と木造の造りが、訪れる人を静かに迎えてくれます。

春には白い花が彩りを添え、自然と心が落ち着くような空間が広がります。


本堂内は控えめな明かりと花が彩る静謐な空間。障子越しに差し込む光もまた、美しさの一部でした。

本堂の中から見た悟りの窓です。少し見つけにくい位置にあるので、訪れる際は覚えておくと良いと思います。
枯山水庭園

明月院の枯山水庭園。松や岩、白砂が織りなす静かな美。
本堂前に広がる枯山水庭園は、丁寧に整えられた白砂と季節の花々が調和する空間。松の枝ぶりと低く整えられた植栽が、禅の世界観をやさしく表現しています。眺めているだけで心が落ち着く庭でした。

松の枝越しに広がる青空と、色づくツツジが美しい景色。
開山堂

境内の奥にひっそりと佇む開山堂は、茅葺き屋根が特徴的な建物。初代住職の木像が安置されていて、境内の中でもひときわ厳かな空気が漂っていました。

紫陽花の絵馬が揺れる傍らに構える開山堂。木々の陰影と光が織りなす景色に、北鎌倉らしい静けさを感じます。
瓶の井(つるべの井)

明月院にある「瓶の井(つるべのい)」は、鎌倉十井のひとつに数えられる由緒ある井戸。岩を垂直に掘り下げて湧き水を汲み上げる構造で、今も清らかな水が湧き出しています。

今も静かに佇む瓶の井。つるべと桶が昔ながらの趣を残す。
木の屋根と縄で吊るされたつるべが印象的な井戸。竹で覆われた井戸口や苔むす石垣が、時代を超えた静けさを感じさせる一角でした。
紫陽花の絵馬と、苔と紅葉が織りなす庭園美

明月院の絵馬には、境内を象徴する紫陽花の花が大きく描かれています。願いごとを込めて並ぶ絵馬から、あじさい寺ならではの風情が感じられました。

境内には、しっとりとした苔とモミジの木々が織りなす庭園も広がっています。足元にはふかふかとした緑の苔、頭上には紅葉の葉が優しく光を受けて揺れる、四季折々の表情が魅力です。新緑の季節は明るく柔らかな緑、秋は燃えるような紅色と、どの季節に訪れても心が落ち着く空間でした。

明月院名物のうさぎたち
境内を歩いていると、ふとしたところに「うさぎ」モチーフが現れます。石像、絵馬、置物、そして訪れた際にはうさぎ小屋もありました。木漏れ日の中で穏やかに過ごすうさぎたちの姿に、思わず足を止めて見入ってしまいます。

明月院のうさぎ小屋と鯉のぼり。
明月院とうさぎには深い関係があります。卯年生まれの北条時頼公にちなみ、「うさぎ=守り神」として祀られているとも言われていて、飛び跳ねる様子から「飛躍・繁栄の象徴」ともされているそうです。境内に点在するうさぎたちは、ただの飾りではなく、明月院の信仰の一端を表す存在。そうしたモチーフに目を留めながら歩くのも、明月院を楽しむひとつの方法だと思います。
うさぎのいるお寺、明月院。月に因み、またお釈迦様にまつわる話から明月院では(置物や本物の)うさぎたちに出会えます。今年は卯年ということでこの度うさぎの絵本が発行されたとのこと。ももちゃん(10才)を主人公に、明月院の四季を紹介するお話だそうですよ。明月院で購入できます。2/6撮影 pic.twitter.com/hZZWrBBl3K
— 鎌倉市観光協会 (@kamakura_kyokai) February 6, 2023
よくある質問
Q. 明月院は何時に行くべきですか?
A. 平日の開門直後、8時半〜9時ごろがおすすめです。特に紫陽花シーズンの6月は週末の10時〜14時ごろが最も混雑するため、朝一番か、雨の日を狙うと落ち着いて拝観できます。
Q. 北鎌倉駅から明月院まで徒歩で何分ですか?
A. 北鎌倉駅から徒歩8〜10分ほどです。線路沿いを鎌倉方面へ進み、案内板に従って住宅街の中を歩いていくと到着します。
Q. 明月院の紫陽花はいつ頃見頃ですか?
A. 例年6月上旬から中旬にかけてが見頃で、ピークは中旬あたりです。年によって前後するため、訪れる直前に最新の開花状況を確認するのがおすすめです。
Q. 明月院は何が有名ですか?
A. 「明月院ブルー」と呼ばれる青一色の紫陽花が最も有名で、「あじさい寺」の別名で親しまれています。本堂奥の円窓「悟りの窓」から望む庭園の景色や、秋の紅葉スポットとしても知られています。
まとめ・明月院

北鎌倉の自然に囲まれた明月院は、紫陽花の名所として名高い一方で、静かな禅寺としての歴史や、悟りの窓をはじめとする写真映えするスポットが随所に点在する場所でした。春の新緑、6月の紫陽花、秋の紅葉と、四季折々の表情を見せてくれる境内を歩けば、日々の忙しさを忘れて心が落ち着く時間が流れていきます。

御朱印や絵馬、うさぎのモチーフといった細やかな見どころも、訪れるたびに新しい発見をもたらしてくれるはず。北鎌倉での散策の計画に、ぜひ明月院を組み込んでみてください。 鎌倉・江の島エリアで実際に歩いて撮影した記事をテーマ別にまとめました。鶴岡八幡宮や長谷寺などの寺社めぐり、江ノ電の駅ごとの見どころ、乗車券や車両の楽しみ方、商店街・グルメまで、鎌倉さんぽの参考にしてください。 藤沢方面から鎌倉方面へ、江ノ電の駅番号順(EN06〜EN15)に並んでいます。



























