飯泉観音(飯泉山勝福寺)参拝ガイド、仁王門・本堂・御朱印まで

小田原市飯泉、酒匂川のほとりにひっそりと建つ飯泉観音。正式には飯泉山勝福寺といい、坂東三十三観音の第五番札所として、古くから多くの巡礼者が訪れてきたお寺です。私が訪れたのは1月、空気が澄んで境内の木々もすっかり葉を落とした季節でした。地元の人が散歩がてらお参りに来るような、静かで飾らない空気が漂う場所です。仁王門をくぐってから本堂、手水舎、隣接する飯泉八幡神社まで、実際に歩いた順番で境内をご案内します。

飯泉観音(飯泉山勝福寺)とは

飯泉観音の始まりは、伝承によれば奈良時代にさかのぼります。道鏡(どうきょう)が下野国(しもつけのくに)へ流される道中、千代の里(現在の千葉山弓削寺)に寺を建て、孝謙天皇から賜った観音像を安置したのが起源とされています。その後、寺が焼失したことで現在の飯泉の地に移り、「飯泉山勝福寺」と名を改めました。

真言宗東寺派に属し、ご本尊は十一面観世音菩薩。坂東三十三観音霊場の第五番札所にあたり、かつて国府津の親木橋からこのお寺まで続く道は「巡礼街道」と呼ばれていたそうです。曽我兄弟が父の仇討ちの成功を仁王門の仁王像に祈願したという伝承や、力士・雷電為右衛門が田舎相撲の大岩大五郎を倒したという逸話も残る、物語の多いお寺でもあります。

名称飯泉山勝福寺(通称:飯泉観音)
住所神奈川県小田原市飯泉1161
宗派真言宗東寺派
ご本尊十一面観世音菩薩
札所坂東三十三観音 第五番
拝観境内自由(本堂・寺務所は8:00〜17:00、時期により変動あり)
駐車場仁王門前に無料駐車場あり
アクセス伊豆箱根鉄道大雄山線「五百羅漢駅」から徒歩約20分/小田原駅東口から富士急湘南バスで「飯泉観音前」下車

仁王門をくぐって参道へ

仁王門前には駐車場があり、車で来る場合はここに停めるのが一番順路に沿っています。バス停で降りた場合も、この仁王門が最初の目印になります。

飯泉観音 仁王門正面にある駐車場

仁王門の目の前に広がる駐車場。ここから参拝がスタートします。

飯泉観音 仁王門

小田原市指定重要文化財の仁王門。朱塗りの柱が青空に映えます。

門の両サイドには仁王像。曽我兄弟がこの像に仇討ちの成功を祈願し、力を授かったという言い伝えが残っています。門を裏側から振り返ると、木組みの重厚さがよく分かります。

飯泉観音 仁王門

仁王門の両脇を固める仁王像。

飯泉観音 仁王門裏側

仁王門を境内側から振り返ったところ。歴史を感じる木組みです。

樹齢700年の大イチョウ

境内には神奈川県指定天然記念物の大イチョウがあります。樹高30メートル、幹まわり7.5メートル、推定樹齢700年という巨木です。私が訪れた1月はすっかり葉を落としたあとでしたが、新緑や紅葉の季節にはまったく違う表情を見せてくれるはずなので、また季節を変えて訪れてみたいと思っています。

飯泉観音 大銀杏

1月の大イチョウ。葉はすっかり落ちていました。

本堂(観音堂)で十一面観音にお参り

仁王門をくぐって進むと、正面に朱塗りの本堂が見えてきます。境内の案内図では「金堂(観音堂)」と表記されていますが、小田原市の文化財指定名称は「本堂」のため、この記事では本堂と呼ぶことにします。

飯泉観音 仁王門から金堂をのぞむ

仁王門の先に本堂が見えてきます。

飯泉観音 境内案内図

境内入口に立つ案内図。仁王門から本堂、八幡神社までの位置関係が分かります。

現在の本堂は、棟札から宝永3年(1706)に小田原藩主・大久保忠増によって再建されたことが分かっています。五間四方の朱塗りで、密教本堂特有の形式を今に伝える建物です。方形の屋根の頂には宝珠が乗り、内部には十一面観音立像を安置する内陣と、板の間の外陣が設けられています。本堂と十一面観音立像は、いずれも神奈川県指定重要文化財(昭和32年指定)です。

飯泉観音 本堂(観音堂)外観

五色の幕と朱塗りの柱が印象的な本堂(観音堂)。

本堂の中に入ることはできますが、ご本尊の十一面観音立像そのものを直接拝観することは叶いません。それでも、堂内に一歩足を踏み入れると、金色の宝華瓶や灯籠、天井から下がる瓔珞(ようらく)の輝きに包まれて、しんと背筋が伸びるような感覚がありました。欄間には極彩色の迦陵頻伽(かりょうびんが、上半身が人、下半身が鳥の想像上の生き物)が彫られていて、江戸中期らしい賑やかな装飾を楽しめます。

飯泉観音 本堂内陣

本堂内陣の様子。金色の荘厳具に囲まれています。

飯泉観音 本堂の提灯

寺号が書かれた大きな提灯と、両脇の欄間彫刻。

飯泉観音 本堂の迦陵頻伽彫刻
飯泉観音 本堂の迦陵頻伽彫刻
飯泉観音 本堂の迦陵頻伽彫刻

極彩色で彩られた欄間の迦陵頻伽。左右で表情が異なります。

なお、ご本尊の十一面観音立像は普段公開されない秘仏とされ、ご開帳は数十年に一度という言い伝えもあります。実際にお姿を目にする機会はなかなかありませんが、それだけに手を合わせる瞬間の背筋が伸びる感覚は、他の寺院とはひと味違うものがありました。

手水舎で出会う龍頭船の十一面観音

本堂の手前にある手水舎も見逃せません。水鉢がなんと舟の形をしていて、その船首に龍の頭、そして龍に乗るように十一面観音像が配置されているのです。この青銅水鉢は宝永元年(1704)に作られたもので、小田原市指定重要文化財。この水で手を清めるだけで、少しご利益を分けてもらえたような気持ちになりました。

飯泉観音 手水舎

舟の形をした青銅水鉢。宝永元年(1704)作。

飯泉観音 手水舎の龍頭

船首の龍頭。細部まで彫り込まれています。

飯泉観音 手水舎に乗る十一面観音

龍頭船に乗る十一面観音。境内で本尊のお姿に近い意匠を見られる貴重な場所です。

銅鐘

境内には小田原市指定重要文化財の銅鐘も残されています。年月を経た緑青の色合いと、鐘楼の朱塗りの対比が美しく、しばらく見上げてしまいました。

飯泉観音 銅鐘

飯泉観音 銅鐘
飯泉観音 鐘楼

小田原市指定重要文化財の銅鐘。緑青の色合いに歴史を感じます。

御朱印とお守りは本坊庫裡で

御朱印やお守りは、本堂の東側にある本坊庫裡でいただけます。坂東三十三観音の札所らしく、御朱印は500円。窓口の方に丁寧に対応していただき、書いていただいている間の静かな時間も、お寺巡りの楽しみのひとつだと感じました。

飯泉観音 御朱印

坂東三十三観音第五番の御朱印。

飯泉観音 お守り

本坊庫裡で授与されているお守りの数々。

飯泉観音 おみくじ結び

結ばれたおみくじ。願いごとの数だけ結び目があります。

弘法大師像

境内の一角には弘法大師像も安置されています。真言宗東寺派のお寺らしい佇まいです。

飯泉観音 弘法大師像

境内に立つ弘法大師像。

隣接する飯泉八幡神社

勝福寺の境内は、隣接する飯泉八幡神社の境内と地続きになっています。飯泉八幡神社は飯泉村の鎮守さまで、お寺と神社の間に境目らしい境目がなく、神仏習合の時代の空気がそのまま残っているような場所です。個人的には、この一体感のある境内がとても気に入りました。

飯泉観音 飯泉八幡神社

勝福寺と地続きになっている飯泉八幡神社。

二宮金次郎、発心の地

本堂の奥、大日堂のそばには二宮金次郎(尊徳)の像があります。少年時代の金次郎がこの地で旅の僧から観音経の話を聞き、一念発起したという言い伝えが残る場所です。薪を背負って歩く姿で知られる金次郎ですが、その原点のひとつがこの飯泉観音にあると思うと、境内の見え方が少し変わってきます。

飯泉観音 二宮金次郎発心の像

境内に立つ二宮金次郎の像。

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境内をさらに歩く

本堂の周りには、まだいくつか見どころが残っています。南門を出る手前で振り返ると、木々に囲まれた静かな一角が広がっていました。

飯泉観音 南門付近の境内風景

南門付近から見た境内の風景。石塔が並ぶ静かな一角です。

境内には小さな石の祠や、馬にゆかりのある馬頭観音堂、大日如来を祀るお堂もあります。それぞれ規模は大きくありませんが、ひとつひとつを見て回ると、このお寺の信仰の厚みを感じられました。

飯泉観音 小さな石の祠
飯泉観音 馬頭観音堂
飯泉観音 大日如来

左から、小さな石の祠、馬頭観音堂、大日如来。

飯泉観音の縁日・年中行事

飯泉観音では、年に3つの縁日に市が立ち、多くの人で賑わいます。

  • ✓1月18日:初観音
  • ✓8月9日・10日:四万八千日
  • ✓12月17日・18日:だるま市(関東で最も早い時期に開催されるだるま市のひとつと言われています)

よくある質問

飯泉観音の読み方は?

「いいずみかんのん」と読みます。正式名称は飯泉山勝福寺(いいずみさんしょうふくじ)です。

御朱印はいただけますか?

本堂東側の本坊庫裡でいただけます。坂東三十三観音第五番の御朱印で、初穂料は500円です。

駐車場はありますか?

仁王門の目の前に無料駐車場があります。仁王門から順路に沿って参拝できるので、車で訪れる場合はここに停めるのが便利です。

坂東三十三観音の何番目の札所ですか?

坂東三十三観音霊場の第五番札所です。国府津の親木橋からこのお寺まで続く道は、かつて「巡礼街道」と呼ばれていました。

まとめ

仁王門から本堂、手水舎、飯泉八幡神社まで、飯泉観音は歩いて一周してもそれほど時間のかからない境内ですが、曽我兄弟や二宮金次郎の伝承、樹齢700年の大イチョウなど、知れば知るほど奥行きが出てくるお寺でした。小田原駅からも足を延ばしやすい距離なので、小田原城やミナカ小田原とあわせて、静かな古刹めぐりの一箇所に加えてみてください。

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⛩ 浅草寺都内最古の寺、雷門から本堂へ
⛩ 明治神宮都心の森に佇む荘厳な神域
⛩ 靖国神社戦後80年、歴史を刻む社
⛩ 亀有香取神社こち亀の聖地、下町の守り神
⛩ 朝日神社六本木に息づく都心のパワースポット
🌊 神奈川県
鎌倉
⛩ 鶴岡八幡宮鎌倉を代表する武家の神社
⛩ 明月院紫陽花で名高い「あじさい寺」
⛩ 高徳院青空の下に座る鎌倉大仏の寺
⛩ 極楽寺江ノ電沿線、静かな山あいの古寺
相模原市・秦野市
⛩ 相模原氷川神社赤い鳥居と風車が可愛い安産の社
⛩ 出雲大社相模分祠縁結びのご利益、出雲の神を関東で
小田原・南足柄
⛩ 松原神社小田原城下、北条氏ゆかりの鎮守
⛩ 報徳二宮神社金次郎の学問・勤勉のご利益
⛩ 飯泉観音坂東五番札所、金次郎ゆかりの観音様
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箱根
⛩ 箱根神社芦ノ湖畔、湖上の平和の鳥居
🗻 山梨県
⛩ 河口浅間神社天空の鳥居、富士を仰ぐ絶景神社